トランプ、Metaを守る？カナダのデジタル課税に“政治的報復”宣言

どうやら、マーク・ザッカーバーグの“トランプ支持”が、ようやく報われる時が来た……と言いたいところだけど、ちょっと思ってた形とは違うかも。

今日、トランプ大統領は「カナダがアメリカのテック企業に不当な課税をしようとしている」として、カナダとのすべての貿易交渉を打ち切ると発表した。対象となるのはMeta（旧Facebook）を中心としたアメリカのITプラットフォームたち。

この課税は実は真新しい話ではない。発端は2023年、カナダ政府が導入したオンラインニュース法。これは、MetaやGoogleのような大手プラットフォームが、ニュース記事を自社プラットフォームで共有する際に、カナダの出版社に報酬を払うよう義務付ける法律だ。

これに対してMetaとGoogleは猛反発。今のメディアの仕組みに合っていないとして、Metaはついにカナダ国内のニュースコンテンツの表示をアプリ上で全面的にブロックした。今でもその措置は継続中。つまり、Metaはこの法律に基づくコストを1円も払っていない状態。

そこでカナダ政府は去年、新たにデジタルサービス税（DST）を打ち出した。これは、カナダ国内で年間2000万ドル（約30億円）以上の収益を上げるデジタル企業に対して、3％の税を課すというもの。ニュースを扱わなくても、カナダでビジネスをしているなら払ってもらうよ、という理屈だ。

この税金の初回支払い期限は来週。そこに目をつけたトランプが「ふざけんな」とばかりに反応した。

Truth Socialでのトランプの発言

「カナダという国は、昔からアメリカの農業製品に400％もの関税をかけるなど、とにかく貿易がしづらい相手だ。そんなカナダが今度は、我々アメリカのテック企業に“デジタルサービス税”を課すと言ってきた。これは明らかにアメリカへの攻撃だ。EUの真似をしてるだけだが、こんなバカげた税に対して、我々はカナダとのすべての貿易交渉を即時終了する。」

トランプはさらに、今後7日以内に「アメリカとビジネスをしたいなら、カナダが払うべき関税額」を発表するとしている。

ただし現実には、トランプ政権はすでにカナダにさまざまな制裁や関税を課しており、今回の措置がどれほど影響力を持つかは不明。

それにしても、Metaがカナダでニュースをブロックしてからもう2年近く、DSTが導入されたのも去年なのに、今さらトランプが気づいたというのも妙な話。

とはいえ、Metaにとってはありがたい展開。Metaがトランプ政権に近づいたのは、まさにこうした外国からの規制や罰則に対抗するためだった。特にヨーロッパ連合（EU）に対しては、これまで何度も巨額の罰金を食らっており、ここ数年だけでも毎年約10億ドル（1500億円）レベルでの制裁を受けている。

ザッカーバーグは今年初めのインタビューでこう語っている。

「EUは過去10〜20年で、テック企業に対して300億ドル以上の罰金を科してきた。これって事実上、アメリカのIT企業にだけかける“関税”みたいなものだよ。アメリカ政府がどう対応するかが問われてる。」

彼はアメリカのテクノロジー産業は、アメリカ経済の希望だとして、政府が守るべき存在だと強調している。

今回のトランプの動きは、そんなMetaの狙いどおりではないにせよ、少なくとも政治的な“お返し”の一部には見える。真の狙いは、EUのデジタルサービス法（DSA）など、もっと厳しい規制に対する反撃にある。

実際、今年の初めにはアメリカの連邦通信委員会（FCC）の委員長がDSAに公然と批判を加え、「アメリカの言論の自由の価値観と相いれない」と発言。副大統領のJDバンスもEUのテック規制を非難している。

ただし、トランプ自身がEUに対して具体的な対抗措置をとったことは、まだない。

つまり、今回のカナダへの強硬姿勢は、ちょっと“軽めのターゲット”を選んだにすぎない可能性もある。Metaが本当にホワイトハウスに望んでいるのは、EUとの全面対決だ。

その流れの中で、ザッカーバーグとMetaが今後どこまで「トランプ推し」のリターンを得られるか、要注目だ。

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執筆：赤髪 / SNS戦略家
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